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放送メディア研究 18
放送を中心としたメディアが、家庭教育、学校教育、社会教育の中でどのように広がっていったのか。送り手がどのように番組を制作、放送し、受け手がどのように授業や学習で利用してきたのか。子どもとメディアの関わりについてどのように研究が行われてきたのか、これからの教育とメディアのあり方はどうあるべきか、などを大学等の研究者を中心に専門家や文研の担当者が執筆をする。
「特集のねらい」より抜粋
ラジオ放送が始まった1925年、後藤新平(東京放送局初代総裁)は放送の4つの機能の一つとして「教育の社会化」を掲げた。その後1936年に教育を専門とするラジオ第2放送、1959年には教育テレビが開局、報道番組、娯楽番組、教養番組と合わせて、多くの教育番組が送り続けられてきている。
(中略)
本特集では次の3点に留意している。
1点目は、「送り手と受け手」のそれぞれの立場からの論考をバランスよく配置したことである。放送を始めとする教育メディアがどのように制作・編成されてきたかとあわせて、どのように利用されたかについての歴史も記録している。
2点目は「家庭教育、学校教育、社会教育」という教育全体におけるメディア利用を扱っていることである。教育番組は学校教育に関わる番組制作と利用、そして研究が多いが、生涯学習時代である現在、家庭や社会での教育とあわせて全体像を見ていく必要があると考えるためである。
3点目は「ラジオ、テレビ、デジタル」の時代を網羅していることである。2024年は「インターネットを通じて放送番組等の配信を行う業務をNHKの必須業務とする」改正放送法が成立した節目の年にもあたり、本特集でも放送だけでなく、インターネットの教育利用についてもその対象としている。
本特集は4部構成としている。以下、各部の概要を紹介する。
第Ⅰ部では、主としてメディアの送り手の立場から、どのような教育メディアでどのようなコンテンツが制作されてきたかの変遷をみる。放送制度の中で教育放送はどう位置づけられてきたのかや、教育番組国際コンクール「日本賞」から世界各国の教育番組の歴史などを振り返る。あわせて放送以外に教育現場で利用されてきたメディアとして、放送に先立つ幻灯や教材映画、その後のコンピュータ、近年のデジタルメディアまでの変遷もみる。
第Ⅱ部では、子どもと映像メディアとの関わりについてみる。2002年に川崎市に生まれた子どもたちとその保護者の協力を得て、子どもたちが0歳の時から12年間、NHK放送文化研究所と小児医学、発達心理学などの研究者が毎年調査を行ってきた「“子どもに良い放送”プロジェクト」の研究成果をもとに、メディアの子どもの発達への影響を考察する。
第Ⅲ部では、メディアを利用した教育がどのように行われたのか、主に受け手の立場からのメデイアを利用した教育の実践や研究の深まりを、学校教育だけでなく社会教育における「団体聴取」や、「趣味・技能講座」の利用、通信教育での活用などについてもみていく。
そして第Ⅳ部では、これからのメディアと教育について、学校現場の1人1台端末の方向性やメディア・リテラシーとの関わり、高等教育・社会教育でのMOOCs(大規模公開オンライン講座)の今後や、シリアスゲーム(社会的な問題解決のためのゲームの開発・利用)の可能性、メディアと表現など多角的な視点から検討する。(後略)