映像は、人間の罪と勇気を照らし出す――連鎖の軌跡の物語 　さまざまな事象が、時空を越えてつながっていく歴史のダイナミズム。「新・映像の世紀」は、真実のドラマを写し撮っ た映像のなかにそれを見出そうとしました。 　私たちは、「新・映像の世紀」のキャッチコピーに、「映像は、人間の罪と勇気を照らし出す」という言葉を掲げました。思い切ってふりしぼった勇気、犯してしまった罪。それらが巡り巡って、積もり積もって、絡み合って、大きな出来事へとつながっていく。たとえその時点では、一人の思いは遂げられなかったとしても、その後その行為が時空を越え、見知らぬ誰かに影響を与え、さらに別の誰かに受け継がれ、最後には奇跡を生む。そうした出会いやつながりこそが、この世界を成立させ、豊かにし、歴史をつくっているように思うのです。伊坂幸太郎さんの小説『PK』のなかの言葉を借りるなら、「勇気は伝染する」。そして「勇気」だけではなく、伝染するのは「罪」も同じです。 　1995-96 年に制作された「映像の世紀」（全11 集）と2015-16 年の「新・映像の世紀」（全6 集）を見て、歴史に興味を持ったという視聴者も多いと聞きます。制作者としてこれほどうれしいことはありません。私たちは、番組を制作するたびに、視聴者の心の片隅にささやかでも何かを残したいという気持ちで取り組んでいます。歴史を生きた人物がふるった勇気、そして犯してしまった罪が、この番組、あるいはこの本を通じて、今を生きる人たちに理解され、時を超えこれからの人生を切り開き、世のなかをより良いものに変える糧となってほしい。そう願いながら、この番組をつくり、この本を刊行しました。 　世界をより良いものにしていくために、自分には何ができるだろう。この本が、それを考えるきっかけになることを願ってやみません。 　 NHK 大型企画開発センター エグゼクティブプロデューサー 寺園慎一 （本書「序」より抜粋）