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戦後補償裁判
東京・大阪・名古屋大空襲、シベリア抑留、戦没者遺骨……。望まざる戦争の被害者たちは、差別や偏見に耐えながら戦後を生き、やがて補償を求めて国を相手に裁判を起こした。はたして彼・彼女らは何と対峙し、どのように闘ってきたのか。戦後「未」補償の問題を長年取材してきた実力派ジャーナリストが、多数の証言から戦後史の死角に鋭く迫った渾身作!
本書は、戦後「未」補償の問題を長年取材してきた著者の集大成と言える一冊です。これまで大空襲やシベリア抑留など、戦争による被害を受けた人たちが、補償を求めて国相手に多くの裁判を起こしてきました。しかし、それらはことごとく敗訴。一方で、政府は元軍人・軍属に対しては、総額50兆円超の補償を行ってきました。
同じ戦争で被害を受けて、なぜこうした違いが生じるのか。そして、なぜそれが21世紀の今もそのままにされているのか。本書で著者は、被害者のみならず、弁護士、政治家など、異なる立場の関係者への取材を通じて、この問題の核心へと鋭く迫っていきます。その経緯については、本書に詳しく述べられていますが、著者が指摘するように80~90歳を超えて裁判闘争を続ける戦争被害者たちの年齢を考えると、解決のために残された時間はそう長くはありません。
つまり、本書で取り上げるのは「歴史」の問題であると同時に、抜き差しならない現在進行形の問題でもあるということです。はたして彼・彼女たちは、戦後、何と対峙し、どのように闘ってきたのでしょうか。ぜひ「国家としての責任の取り方はどうあるべきか」ということを一緒に考えながら、読んでいただければと思います。(NHK出版 山北健司)