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証言 治安維持法

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NHK出版新書 607

証言 治安維持法 「検挙者10万人の記録」が明かす真実

[著] NHK「ETV特集」取材班 [監修] 荻野 富士夫

発売日 2019年11月11日

新書

在庫あり

定価 990円(本体900円)

送料 110円

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商品紹介

自由はこうして奪われた――。体験者の生々しい肉声から、20年におよぶ運用実態に迫る。

大正末期の1925年に制定された治安維持法。当初は「国体の変革」や「私有財産制度の否認」を目的とする結社―主に共産党を取締り対象としていたが、終戦の年に廃止されるまで運用対象は一般の市民にまで拡大された。
ふつうに暮らすふつうの人々が次々に検挙されたのはなぜか。当事者や遺族の生々しい証言と、公文書に記載された検挙者数のデータから、治安維持法が運用された20年間を検証する。
NHK ETV特集「自由はこうして奪われた~治安維持法 10万人の記録~」の書籍化。

―「はじめに」より

 まず序章で、現在も声を上げ続けている検挙者の証言を入り口に、治安維持法がどのような目的で作られたのか、成立の経緯を概観する。途中、歴史的な記述が続く部分は、同法の成り立ちを理解するために必要と考え、やや詳しく書いたが、証言を中心に読んでいきたい読者は第一章から読み進め、必要に応じて序章に戻っていただいてもいいだろう。
 第一章から第五章では、法律が運用された二十年間の検挙者数のデータを分析して特徴的な変化を示す時期や地域を各章ごとに絞り込み、当時の出来事を、該当する証言者のエピソードを通して描いていく。同時に、証言者たちがなぜ検挙されたのか、時代的な背景や法律の運用状況を専門家の見解を交えながら検証する。
 第六章では、治安維持法をはじめとする戦前・戦中の治安体制と戦後の治安体制の連続性について検証し、終章では本書に登場した証言者たちの戦後の歩みを見ていく。
 書籍化にあたり、番組内で紹介することができなかった当事者の証言やエピソードをできるだけ織り込むよう心がけた。
 戦後七十四年が経過したいま、当時を知る方々から話を聞くことはますます難しくなっている。しかし時代が遠ざかれば遠ざかるほど、実際に出来事を体験した人の生身の感覚こそが重要性を増していくのではないだろうか。さらに強調しておきたいのは、今回取材に応じてくれた証言者の誰もが、治安維持法は遠い昔の無関係な法律ではなく、その時代を知らない私たちにも重要な示唆を与えるものと考えていたことだ。
 本書がかつて存在した治安維持法と、この法律によって人生を変えられた多くの人の声の一端を伝え、これからの社会を考えるための一助となることを願っている。

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目次

はじめに

序章 声を上げ続ける検挙者たち
 百三歳のメッセージ/獄中にいるとき、妻は亡くなった
 治安維持法の目的/ロシア革命と米騒動が示した“民衆の力”
 既存の法律では民衆の思想を抑えられない/狙われていたのは表現の自由だった
 そして、治安維持法は成立した

第一章 拷問された少女と一人の特高──三・一五事件
 データから見えてきた検挙者数の推移/三・一五事件──初めての大規模一斉検挙
 共産主義者の娘/少女は連行され、拷問を受けた
 書類の上だけの釈放/特別高等警察とは何か
 いまも残る、特高の極秘資料/告発された拷問
 九十年後のトラウマ/事件に関与した警察官の自伝
 ある特高警察官が誕生するまで/特高警察官の人間性
 国内最初の治安維持法適用事件

第二章 ある青年教師の追放──二・四事件
 大検挙時代の出現/教員たちが一斉に捕まった
 事件当時を知る男性が出演を断ったわけ/予想もできなかった検挙
 データが語る検挙対象の変化/「死刑」の導入
 目的遂行罪とは何か/「思想検事」の誕生
 新聞を取り寄せ、配布した罪/背景は「子どもの貧困」
 末端の「影響下分子」も検挙/初等教育「赤化」の波紋
 無罪でも職を追われた教師たち/政府の情報戦略が改正につながった
 小林多喜二と吉野源三郎/弁護士も裁判官も捕まった

第三章 転向させられた人々
 転向が当局の大目標となった/利用された家族
 学生たちを泳がせた留保処分/裁判官はいかに被告人を追い詰めたか
 転向は報道された/末端の教師たちの転向
 自己分析を続ける青年教師/教え子を満州へ送り込む国策
 国家に積極的に従う国民を作る/転向を拒む人々をどうするか
 転向が戦後に落とした影

第四章 言葉を守ろうとした兄──植民地での運用実態
 植民地でも適用された治安維持法/公開が進む韓国の資料
 ある日、一人の学生が検挙された/反日運動を行う中学生たち
 独立運動が治安維持法違反/植民地の独立は「国体の変革」である
 法律はまず朝鮮半島で威力を発揮した/水責めに遭った兄
 効果が出なかった転向政策/学生が二年六か月の実刑判決
 二十二人が死刑に/明らかにならない獄死の実相

第五章 絵を描いて有罪となった学生──生活図画教育事件
 十年間の取締りの成果/反ファシズムの動きを取り締まる
 特高による「えぐり出し」/宗教への取締り
 国体観念を認めなければ有罪/「新」治安維持法の成立
 美術教師を目指していた青年/思想善導の末の検挙
 限界まで拡大していた検挙対象/犯罪の証拠とされた絵
 本を写し書きした尋問調書/自白調書の証拠採用
 ねつ造された証拠/「地獄だったね……よく生きていたと思う」
 標的となった在日朝鮮人

第六章 終戦 治安維持法はなくなったのか
 民主化への道筋は示されたが……/そして、治安維持法は廃止された
 思想検察から公安検察へ/濫用は制定時より懸念されていた
 治安維持法の教訓を現代に活かすために

終章 それぞれの戦後
 大竹一燈子さんの場合/立澤千尋さんの場合
 シン・ギチョルさんの場合/松本五郎さんと菱谷良一さんの場合
 
おわりに
主要参考文献

商品情報

発売日
2019年11月11日
価格
定価:990円(本体900円)
判型
新書判
ページ数
272ページ
商品コード
0088607
Cコード
C0221(日本歴史)
ISBN
978-4-14-088607-6