
この世にはいない者とされ、記憶を失ったまま巫女として生きるヨヌ/ウォル。第7回、王となったフォンの姿を目にしたとたん、彼女の目からは、わけもなく涙があふれ出す。ドラマの新たな幕開けを予感させるワンシーンだ。高いレベルの演技が要求されるこのシーンの撮影に、ハン・ガインは、クランクインしてすぐに臨んだ。
「実際の生活の中で、ふと『私、どうして悲しいんだろう?』って感じることってありますよね。涙ぐんでいるのに、それがなぜかを説明できない、理解できない。心だけがその理由を知っているような、デジャヴにも似た不思議な感じ……。言葉にできないその感覚を表現するのはとても難しかったです」
そしてこの瞬間から、ヨヌの中深くに封印されていた記憶が少しずつ蘇り、運命の歯車が再び回り出す——。
もともと、原作者のチョン・ウングォルのファンで、彼女の小説はすべて読んでいるというハン・ガイン。本作への出演オファーを受けたときも、「あの面白かった小説がドラマになる!」と興味津々だった。
「台本を読んでみたら、見る人を惹きつける要素がたくさん盛り込まれていました。毎回、次の台本が手元に来るのを楽しみに待って、台本が届いたら出演者同士で内容について話をする。こういうことは、普段あまりありません。それほどストーリーに力があったんです」
しかし、初めて挑戦する時代劇は「何もかもが現代ドラマとは違った」という。
「何百年も昔のことですから、時代的な面から考えても、動きや表情をあまり豊かにしてはいけないと考えました。また、日常的に王と接する役なので、王の前ではかしこまった演技にならざるをえませんでした」
常におとなしく控えめに動くようにしていたが、可憐な外見に似合わず、気さくでさばさばとした性格のハン・ガインには、それがじれったくもあったようだ。