夢を追うふたりが
選んだ遠距離結婚
土屋 希が圭太と大輔さんの間で揺れるところ、実は私、その気持ちだけは理解できなかったんです。両方が好きっていうあの三角関係な感じが嫌で……。だから、自分に置き換えてみて、「撮影現場に行きたいけど大学にも行きたい。それで、大学に行けば行ったで、撮影現場に行きたい」っていう気持ちと同じなのかなって思うようにしたんです。
山﨑 同じかも(笑)。
土屋 それでも、大輔さんに交際を断るのが申し訳なくて、申し訳なくて。リハーサルのときに泣いちゃって、演出の一木正恵さんにびっくりされたんですけど(笑)。それで大輔さんを〝ソウルメイト〟だと思うことにしたんです。恋愛や結婚などに関係なく、大輔さんは自分に必要な人って。だって、圭太に「好きや」って言えたのも、大輔さんが心を開くことを教えてくれたからで、そこへ(二木)高志の歌という鍵によって扉が開いて……。
山﨑 するとそこには圭太がいた!
土屋 ライブハウスで告白するシーンは難しかったです。たくさんのエキストラさんがいたり、音楽に合わせて演じないといけなかったり、段取りもいろいろあって。けれど最終的には、圭太だけを見ていればいいと思ってやりきりました。
山﨑 僕もあのときは事前に何も言葉をかけなかった。そのときの感情に対して素直に演じればいいんじゃないかなと思って。
土屋 ただ、希と圭太の感情がそこまで到達したのは、輪島塗の展示会でのハプニングを一緒に乗り越えたという出来事があったからなのですが、実際は、ライブハウスのシーンの撮影のほうが先に行われたんです。だから、自分の中でその気持ちを埋めていくのがとても難しくて。希も圭太も、どんどん私の先を歩いていくから、本当に大変です。それこそこれから、私が経験したことのない〝結婚〟にも突入していきますし。
山﨑 そうだよね。それも、2年半待ってくれって言ったあとで。たぶん、希の修業がなかったら、すぐに結婚してくれって言ったと思うけれど。希の夢のことを考えての、苦渋の決断でした。
土屋 それに、圭太には一子との遠距離恋愛がうまくいかなかったという経験があるから、2年半会わなくても気持ちが変わらないかどうか、試したい気持ちもあったんだと思う。あと、私自身が今そうなんですけど、希も圭太も寝る時間がないくらいだから、修業中はやっぱり恋愛どころじゃないと思います(笑)。
山﨑 いい加減な気持ちで夢は追えないしね。だから、夢を大事にしたい希と圭太が遠距離結婚を選ぶのは、やむを得なかったと思います。
敬し合い、
応援し合う夫婦に
山﨑 遠距離結婚だけど、弥太郎さんが入院して圭太が大変な状況になったときに、希が能登に戻ってきてくれたのは、やっぱりうれしかった。
土屋 希は忘れてないんですよね。圭太に応援してもらったからパティシエの道を進めたということを。以前は、おいしいケーキを作ることが恩返しだと思っていたけど、今は圭太のそばにいてあげるのが恩返しだなと、変化したんじゃないかなって思うんです。
山﨑 昔からお互いの夢に対する思いを知っていて、お互いに尊敬し合っているからこそ、できることだよね。
土屋 どちらか一方的に応援する/されるということではなく、お互いに応援し合っている。そういう夫婦って理想だなと思います。
山﨑 そしてこれからは、能登に希の店ができて、圭太の作る輪島塗の器に希のケーキを載せるとか、お互いの夢がひとつになっていくんだろうね。店のBGMは、以前、能登に移住してきた京極ミズハさんのシタールとかで(笑)。
土屋 希のケーキ屋さんがそういう場になればいいですよね。能登の皆が集まる場所。いったん能登の外に出た人も戻ってこられるような。
山﨑 きっと、希の夢が圭太の夢にもなるし、(津村)徹さんの夢にもなって。能登の皆の思いが詰まった店になっていくような気がする。
土屋 皆の思いを受け継いで、地元に誇りを感じながら生きていくっていうことを、希たち若い世代が伝えていけたらいいよね。
山﨑 昔からある伝統的なものを守って残しつつ、新しいものも作っていくような、そういう希と圭太の挑戦みたいなことも描かれるはずなので。
土屋 〝温故知新〟ですよね。そういう古くて新しい夫婦になりたいね!
山﨑 いいね!
土屋 希と圭太も、「お疲れさまでした。お茶どうぞ」みたいな、礼節を感じられる会話をしているし。それでいて、夫が外で頑張って妻が家を支えるっていう夫婦でもなくて、双方が頑張っているという現代的な夫婦像だし。
山﨑 夫婦ならではのそっと支え合っている感じもある。
土屋 うん。そうやってこれからも頑張っていきますので、ふたりが成長していく姿を見守っていただけたらうれしいです。
取材・文=大内弓子 撮影=新津保建秀
土屋太鳳さん:Styling=中村安孝(ディアグランツ)
Hair & Make-up=高橋 綾 衣裳協力=シャツワンピース/MIDDLA ¥28,000(lessthan Co,Ltd TEL 03-6447-0193)
山﨑賢人さん:Styling=伊藤省吾 Hair & Make-up=SHUTARO(株式会社ビタミンズ)
了
(『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 まれ Part2』より再録)
つちや・たお
1995年生まれ、東京都出身。2005年、スーパー・ヒロイン・オーディション ミス・フェニックスで審査員特別賞を受賞し、08年、映画「トウキョウソナタ」でデビュー。NHKでは、連続テレビ小説「花子とアン」「おひさま」、大河ドラマ「龍馬伝」、「今夜は心だけ抱いて」「真夜中のパン屋さん」などに出演。その他、ドラマ「鈴木先生」、映画「るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編」など出演作多数。
やまざき・けんと
1994年生まれ、東京都出身。2010年、ドラマ「熱海の捜査官」でデビュー。代表作はドラマ「35歳の高校生」「チーム・バチスタ4 螺鈿迷宮」「弱くても勝てます〜青志先生とへっぽこ高校球児の野望〜」「水球ヤンキース」、映画「L♡DK」など。14年、初舞台「里見八犬伝」で主演を務めた。7月5日スタートのドラマ「デスノート」(日本テレビ系)にL役で出演中。映画「ヒロイン失格」が9月19日公開予定。