TOPICS Interview マリーア・ドゥエニャス(2) 海外ドラマ「情熱のシーラ」 原作者

NHK出版 Webマガジン

女性は流されながら強くなっていく

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小説の中の女性たちはだんだんと力強くなっていくのですが、野望をもって成長したわけではないんです。世の中の流れに押されて、そのような女性に成長しただけなのです。それに対して男性は、たとえばフランコにしても、あるいはほかの男性も、すべて野望をもって動いているわけですね。

シーラの場合、公務員の婚約者がいて将来は安泰だったはずが、新しい恋人があらわれて駆け落ちすることで、人生が動きだす。そして、お金のために仕立屋の仕事を始める。また、彼女の友人のロザリンダ・フォックスも、年上の男性と結婚して落ち着いた生活をしていましたが、夫に捨てられるというショッキングな出来事によって、人生が変わりました。

彼女たちは変化するポテンシャルを秘めていたわけですが、そんなポテンシャルをもっているなんて、自分では知らないことが多いんですね。ただ、いろいろな状況に押されて、そういった自分があらわれ、だんだんと力を増していくわけです。

ヒロインの職業としてドレスの仕立屋を選んだのも、作品の中で、女性が独立して活躍できるようにと思ったためです。

本当に針と糸だけで家族を養ってきた仕立屋の女性たち、歴史の中で静かに活動していたこれらの女性たちに、この作品を通じて光を当てられたことを、たいへんうれしく思っています。

テレビドラマには大満足

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私は幸運なことに、制作プロダクションと非常にいい関係をもつことができました。作品の魂を大切にしていただいたことを非常に感謝しております。唯一気にしていたのは、読者を裏切るような作品にならないように、それだけでした。

このシーラの女優さんは100%ぴったりでした。アドリアーナ・ウガルテさんは、私が考えたとおり、本当にシーラという人物像を自分のものにしていました。

エピローグには自由な選択肢があっていい

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私は、エピローグで、まず歴史的な登場人物がどうなったのかを描きました。そして、フィクションの人物、シーラやマーカスのその後については、読者の想像にゆだねました。もしかすると英国の情報機関に所属しながら、いっしょに世界各地に行ったのかもしれないし、あるいは結ばれなかったのかもしれない──。いろいろな選択肢があります。ぜひ読者に選んでほしい。

これについては、喜んだ読者もいましたが、中には私のことをたいへん怒った読者もいました。ハッピーエンドとして書き上げないなんて、どうなっているんだ!という読者もいたんです。

私の中では小説というのはあくまでも対話ですので、読者の側からの話があってもいいのではないか、と思っているんです。テレビの脚本の最終話で、最初、シーラとマーカスがどこかの山奥の小さな教会で結婚する、という結末になっていたんですね。私はそれを読んだときには、赤ペンでチャンチャンと[バツを]書いたんです(笑)。2人が結婚するなんて絶対に許さない、と。あくまでも小説の場合は読者、ドラマの場合は視聴者にそれぞれの終わり方を考えていただきたいのです。ですから、みなさん、自由に考えてください。どうぞお任せしますね。

〔2015年10月5日セルバンテス文化センターでの講演会「文学と映画:原作者マリア・ドゥエニャスを迎えて~メイキング・オブ『情熱のシーラ』」より〕
写真 マリーア・ドゥエニャス
María Dueñas
1964年スペインのシウダ・レアル県プエルトリャノ生まれ。英語文献学博士。ムルシア大学教授。米国の大学で教鞭をとった経験を持ち、教育、文化、出版に関するさまざまなプロジェクトに参加。2009年に本作でデビュー。世界で400万部超の大ベストセラーとなり、多くの読者や評論家を魅了する。さらに、30か国以上に翻訳され、テレビドラマ化もされた。Misión OlvidoLa Templaza(いずれも未邦訳)も刊行され、ともに50万部超のベストセラーとなっている。

ドラマガイド スペインドラマ・ガイド 情熱のシーラ

NHK出版 編
本体1,000円+税
B5判並製・80ページ(オールカラー)
スペイン内戦と第二次世界大戦、そしてさまざまな愛に翻弄された、お針子・シーラの波乱の人生――華麗でミステリアスなスペインドラマの幕が開ける! ストーリー紹介、時代背景や舞台地(スペイン・モロッコ・ポルトガル)の解説など、ドラマ「情熱のシーラ」を楽しむための情報満載の一冊。
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原作 情熱のシーラ 上

マリーア・ドゥエニャス 著
宮﨑真紀 監訳
大友香奈子 村田悦子 訳
本体1,500円+税
四六判並製・264ページ
1911年にマドリードで生まれたシーラは、天才的な裁縫の腕をもつお針子だ。スペイン内戦前夜、恋人とモロッコに移り住むが、彼の裏切りで何もかも失う。失意の底にあったシーラを救ったのは、1本の針と糸だった――。激動の時代、数奇な運命を生きたヒロインを圧倒的な筆力で描く。全世界で400万部超を売り上げた歴史大河ロマンの傑作!
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原作 情熱のシーラ 中

マリーア・ドゥエニャス 著
宮﨑真紀 監訳
船越隆子 轟志津香 訳
本体1,500円+税
四六判並製・280ページ
スペイン生まれのお針子シーラは、第二次世界大戦前夜にモロッコに渡り、紆余曲折の末にオートクチュール店を開く。やがて顧客との付き合いを通じて、政治の世界に繋がってゆく。折しも、スペインはナチスドイツに加担して、参戦しようとしていた。それを阻止するため、シーラはスパイ活動を始めるが……。NHK海外ドラマの原作小説第2弾!
原作 情熱のシーラ 中
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原作 情熱のシーラ 下

マリーア・ドゥエニャス 著
宮﨑真紀 監訳
草野香 轟志津香 訳
本体1,500円+税
四六判並製・264ページ
第二次世界大戦下、シーラは祖国スペインの危機を救うためにマドリードでスパイ活動を始める。そんなある日、ナチスドイツのスパイと思しき人物の調査のため、リスボンに派遣される。謎の男の正体は?彼が口にした〈オオカミの涎〉とは何なのか。息詰まる諜報戦を制するのはどちらか。NHK海外ドラマの原作小説、ここに完結!
原作 情熱のシーラ 下
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