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フランツ・ファノン『黒い皮膚・白い仮面』 2021年2月
フランス領カリブ海マルティニークで生まれたフランツ・ファノン(1925-1961)は、アフリカから連れてこられた奴隷の子孫である「黒人」として、さまざまな差別を経験する。人間の自由と平等を信じ、戦時中は自由フランス軍へ志願し、戦後は本国フランスで学んで精神科医となった彼は、「白人」によって「黒人」がつねに劣った存在としてまなざされ続ける現実に激しい怒りと疎外感を覚える……。
精神科医としての医学的知見を動員して人間を観察し、文学作品に描かれた「白人コンプレックス」にも考察を伸ばし、人間の心理に深く内面化された差別の構造に迫ろうとしたファノン。彼の葛藤と思想的足跡が綴られた本書は、いま私たちに何を気づかせてくれるのか。植民地主義がいまだ影を落とし、同胞が差別しあう現代において、人間が抑圧から「解放」されるには、いかなる思索や視点が必要なのか。
現代の文学作品に投影された差別の実状や、ファノンが生きた時代の歴史的背景もふまえつつ、フランスのカリブ海文学に造詣の深い作家・小野正嗣氏が、「ブラック・ライヴズ・マター」を考えるうえでも必読の本書に込められたメッセージを読み解く。
チャンネル | 放送日 | 放送時間 |
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Eテレ(再) | 水 | 午前5:30~5:55 |
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作家・仏語文学研究者。早稲田大学教授
1970年、大分県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得満期退学。パリ第8大学において、フランスのカリブ海の海外県グアドループ出身の作家マリーズ・コンデの作品研究で博士号を取得。立教大学教授を経て2019年より早稲田大学文化構想学部教授。「水に埋もれる墓」(2001)で朝日新人文学賞、『にぎやかな湾に背負われた船』(2002)で三島由紀夫賞、「九年前の祈り」(2014)で芥川賞を受賞。近著に『ヨロコビ・ムカエル?』『踏み跡にたたずんで』など。主な訳書にエドゥアール・グリッサン『多様なるものの詩学序説』、マリー・ンデイアイ『ロジー・カルプ』『三人の逞しい女』、アミン・マアルーフ『アイデンティティが人を殺す』、アキール・シャルマ『ファミリー・ライフ』など。2015年には、放送大学のテレビ講座「世界文学への招待」のために、フランツ・ファノンの出身地、フランスのカリブ海の海外県マルティニークを訪れ、作家パトリック・シャモワゾーにインタビューを行う。2018年よりNHK「日曜美術館」のキャスターを務める。